Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by Ishikawa kazuhiro, individual
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筆者は日本語使用者であり、パブコメは日本語で書きます。
またICRPの案は日本の市民団体が翻訳したものを参照しました。

Annals of the ICRP ICRP PUBLICATION 1XX Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident Update of ICRP Publications 109 and 111 本文 日本語訳(2019 年 9 月 5 日、8市民団体による仮訳)
https://www.shiminkagaku.org/wp/wp-content/uploads/ICRPdraft_Japanese_20190905-1.pdf

 

2.2.1.1.重度の組織/臓器損傷

「(19)非がん性の影響に関する最近の追加的証拠は、放射線療法を受けているがん患者および 広島と長崎の原爆生存者の研究から得られている。これらの研究は、心臓に対する数百また は数千 mGy の線量と関連する循環器疾患による死亡のリスク増加を示している (Little,2002)。低用量での状況はあまり明らかではない」
とあるが、原爆について、放射線の特に、内部被曝量や被曝による疾患が適切に科学的に評価されず、過小評価の疑いがあることから、多数の原爆被ばく者が自身の疾患を「原爆症」と政府は認定すべきと裁判をし、政府の認定却下を取り消す判決が複数出ている。

‪原爆症、終わらぬ認定訴訟 敗訴続いても却下続ける国:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASM787QGJM78PTIL03N.html‬

‪原爆粉じん:急性症状多発 放影研、内部被ばく過小評価か - 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20170730/k00/00m/040/124000c‬
「粉じんを浴びたグループの急性症状の発症頻度が、浴びていないグループの10倍以上と極めて高かったことが分かった。日米共同研究機関「放射線影響研究所」(放影研、広島・長崎両市)は、放射性物質が付着した粉じんなどを吸い込んだ内部被ばくの影響を「無視できる程度」とし、原爆症認定などで指標とされてきた。大滝名誉教授は「被爆者の急性症状や後に起きた障害の主原因は内部被ばくの可能性が高い。影響が過小評価されている」と指摘する。」

ICRPの放射線影響評価に、放射線影響研究所の原爆被曝データは多くな影響を与えているとみえるが、広島大学の大瀧慈名誉教授によると内部被曝の影響や被曝量の評価が過小評価されている疑いがある。

このように原爆被曝について再評価を行う日本の研究者にもヒアリングをし、低用量や内部被ばくにおける影響評価を再検討していただきたい。

内部被曝については放射能微粒子は質量あたりの比放射能量が多いとして、九州大学の研究者も福島の事例で調査をしている。
低用量や内部被曝について、予防的に危険を警告してほしい。

福島原発から放出された高濃度放射性セシウム(Cs)含有微粒子(CsMP)の個数、放射能寄与率の分布図を初めて作成 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY) https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/388
「2011 年の福島原子力災害により放出されたCsMPは数ミクロン程度と小さいですが、通常の汚染土壌と比べて単位質量あたりが非常に高い放射能(~10¹¹ Bq/g)を持つため、局所的な放射線の影響が懸念されています。CsMPを含む放射性セシウムはプルームと呼ばれる大気の流れに乗って煙のように流れていく現象により拡散しました」

 


2.2.3社会的影響
2.2.4経済的影響
「企業は、汚染の存在に関連した追加的な障害に直面」
「これらの企業や 製品のイメージにも影響を与える可能性がある。 」
などは、放射能汚染の物理的生物学的影響ではなく、社会経済的影響を指すものと思われる。
これについて日本社会全体で気になる現象が発生している。
日本政府や各自治体は、放射能汚染の社会経済的被害を「風評被害」と呼んでいる。
「風評被害」とは
出典:デジタル大辞泉(小学館)によると
「根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが受ける損害のこと」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/241515/meaning/m0u/
とある。
放射能汚染の影響を「風評被害」と呼ぶことにより、重大な問題が起きている。
日本社会で起きているのは、原発事故時、政府の指示した区域以外に放射線量が上昇したり、放射性雲が到達した地域があり、そこから避難したり、その地域の食品などの摂取を控えたりして放射線防護をした人を「風評被害を煽る」と攻撃する風潮だ。
ご承知のように、放射線のがん発生の懸念のある放射線量には、閾値が無い。
さらに放射線感受性は、遺伝子の感受性により規定され、年齢や性差で、影響には個人差がある。
それゆえ、自らや自らの家族や子どもの健康を心配した人々は、政府の避難指示はないが、放射線量が上昇し、放射能汚染の影響のあった地域から避難した。ここには一定の合理性があるはずだ。

実際に放射能に汚染された地域から避難した人や放射線防護を採用した人が非難され、国の支援策(2017年、日本政府と各自治体は、唯一の原発避難者支援である住宅費補助を打ち切った)を打ち切られ、差別されるという事態が起きている。
政府の避難指示区域外である福島県郡山市から大阪府へ避難した森松氏に取材した記事にはこうある。
「「なぜ福島に戻らないのか理解できない」「過剰反応ではないか」――。多くの自主避難者は二重生活の過酷さのみならず、心ない差別や偏見にもさらされている。「自主避難者は風評被害を助長する存在だ」と罵倒する者もいる。
だが、「被ばくは人権問題であり、人の命や健康にかかわるもの」と森松さんは確信している。そして、夫および2人の子どもとともに、国および東京電力を相手に損害賠償請求訴訟を提起したのも、命や健康という基本的人権を守るためだ。」
https://www.google.co.jp/amp/s/toyokeizai.net/articles/amp/120450%3fpage=4

従って、ICRPの参考値である年20ミリシーベルトを参考に、政府が年20ミリシーベルト以下なら当該地域に暮らせるという指示を出したことは、混乱を生み出したことをICRPは知るべきである。
20ミリシーベルト以下だが、放射能汚染のある地域の住民や避難者の放射線防護行動を「風評(根拠ないデマ)」に踊らされたもの、風評を発信したものと非難されたからである。
彼らは社会的に非難され、レッテルばりされ、政府や自治体から適切な支援を受けていない。
もちろん政府の事故対策費には限界があるが、事故を引き起こした東京電力は、政府からの支援や電気料金への事故対策費の転嫁によって、経営を回復している事実があり、他方救済されない被災者や避難者がいることは大変矛盾である。

原発事故においては、予測不能な甚大な被害が起きる。
その時には、より放射線の影響を受けやすい人々を考慮して、未来に起きうる放射線障害を減らす基準を考えてほしい。
従って、「年1ミリシーベルトを下回って可能な限り低く、放射能汚染が低減される」ことが、被ばくに関わる唯一の基準であろう。

今日、日本政府へ「被災者・避難者に対する十分な説明と同意がない」まま、避難指示を解除し、避難者支援を打ち切り、事実上帰還するしかない状況を作り出している。
事故からまだ10年も経たない状況での、安全宣言などあり得ないはずだ。
また、仮に故郷から離れたくないとして汚染地域に暮らす人がいても、政府や自治体は、その人に対する健康診断や放射線防護を支援すべきである。
現状20ミリシーベルトを下回れば、安全とされ、汚染影響がある地域に居住したままの人に対する防護策がほとんど取られていないようにみえる。
つまり、汚染地域に居住する人も、そこからの避難者も防護支援がない状況だ。
これらの事態をICRPは認識し、問題視しているのだろうか。

繰り返すが「年1ミリシーベルトを下回って可能な限り低く、放射能汚染が低減される」ことが、被ばく防護に関わる基準として強調されるべきである。
日本政府や各自治体のように、本人の同意なしに、住民から追い出したり、住宅支援を打ち切り、帰還せざるを得ない状況を作ってはならないのだ。

 


3.緊急時対応
3.1.初期と中期の特徴


「(89)初期段階では、ラジオ、テレビ、テキストメッセージ、電子メール、ソーシャルメディ アなど、利用可能なすべてのチャンネルから被災者に情報を提供すべきであると委員会は勧告している」とあるが、日本政府は、SPEEDIなどの、緊急時放射能拡散システムの拡散予報を公表しなかった事実をICRPは厳重に受け止めるべきだ。
故に私は西日本の居住者であるが、放射能拡散について、フランスIRSNの拡散予測を参考にするしかなかった。
政府に指示された以外にも、広大な地域に放射能が拡散したことは科学的に明らかになっているが、人々は汚染拡散を知らされず、マスクをしたり、屋内退避して換気扇を止めるなどの内部被曝防護措置を取ることができなかった。
政府が過失や不作為や隠蔽を行う恐れがあることはチェルノブイリ事故で明らかだったが、福島第1原発事故でも起きたということを認識し、勧告を書くべきだ。


3.2.2.2.個別のモニタリング
であるが、日本政府は被災者の被曝量を緊急時に適切に測定しなかったことはすでに明らかになっている。

「見捨てられた初期被ばく――スクリーニング基準値の引き上げと変質に関する経緯」(15年3月号)『科学』2015年3月号(第85巻第3号)296〜306頁、ダウンロードはこちら
「厚生労働省が「10 万 cpm 未満は心のケ ア」との通知を出した 21 日は,東京を含む関東 全域に放射性雲が飛来していた日でもあります。 降雨もあり危険の周知が最も必要なタイミングで した。本来ならば翌日から広範な地域で体表面汚染スクリーニングが必要だったはずです 」
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_201503_study.pdf

 

4.3.1.5.健康調査
(197)被災地での被ばくレベルがどのようなものであっても、経験によれば、汚染の存在と その長期的な健康への影響の可能性は、住民の間で依然として広く懸念されている。適切な 生活条件を確保するためには、この懸念に慎重かつ尊厳をもって対応することが不可欠で ある(Oughton et al.,2018)。


であるならば、日本の津田敏秀らが国際環境疫学会誌上で発表された査読論文やそれに受けた国際環境疫学会長の日本政府へのレターを参照していただきたい。

甲状腺がん「信頼性高いリスクの推定を」〜国際環境疫学会が忠告 | OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2026


また以下のような注視が必要な報告もある。

福島原発事故後の複雑心奇形の全国的増加
研究成果は、
米国科学誌「Journal of the American Heart Association (ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ハート・アソシエーション)」に 2019 年 3 月 13 日掲載(米国東部時間)
https://www.nagoya-cu.ac.jp/about/press/press/release/files/20190314/310314.pdf

さらには、日本政府に対し、国連人権理事会のグローバー勧告や国連自由権規約委員会が帰還を見合わせるよう勧告している。

科学的な見地からもだが、人道的な見地からも、日本政府の放射線防護政策は、警告が重ねられているにもかかわらず、建設的な対話を日本政府は拒否している。
ICRPが民間団体ということは承知しているが、これまで各国政府が勧告を参照して、防護政策を決定していることは事実である。
また、日本政府の福島事故の放射線防護行政に関する複数の研究者が今回のICRP勧告案作成に関わっている。
独立系民間研究団体としては、政府との利益相反関係をチェックし、被災者の人道的な観点を最重要視する姿勢が必要。

また、福島事故に関し被ばくの危険性を示唆する諸研究を取り入れて、被ばくを予防的に防ぐ勧告となるよう切に要望する。

 

 

 


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